ケリー・リンク 『プリティ・モンスターズ』

プリティ・モンスターズ


少女たちの奇妙な友情を綴ったローカス賞受賞の表題作。哀しくも明るい破滅の風景を描く「サーファー」。傑作ファンタジイ「パーフィルの魔法使い」。現代アメリカ女性文学の新しい潮流を代表する作家リンクの最新作品集。全10篇収録。 


ケリー・リンク『プリティ・モンスターズ』読了。
(原題:PRETTY MONSTERS   柴田元幸訳)



大人にこそ、お伽話が必要な時がある。

箒で空は飛べない。
夜空から星を取ることは出来ない。
雲は食べられないし花は歌わない。

無限にお粥が出てくる鍋はないから働いてお金を稼がなくては生きていけない。
王子様を待っていても迎えには来ないから、美容院に行き化粧をしワンピースを着て
王子様を捕獲しに行かなくてはいけない。
悪い魔法使いは現代にもたまに生息しているが、だいたい勝ち目はない。


待っていてもハッピーエンドは勝手には来ないから、自分で現実と闘うしかない。


逃避や拒絶は案外体力が要る。
ただやわらかい夢に浸っていたい時もある。


ケリー・リンクのお伽話は、あんまり夢を見させてくれない。
ぜんぜんロマンチックじゃない。
出会うのはお姫様でも妖精でもなくてゾンビだし。
戦争が起こっているのに魔法使いたちは塔にこもったままの役立たずだし。
命を助けてくれた男の子に運命を感じても、相手はまったく振り向いてくれないし。


ぜんぜんロマンチックじゃない。うまくいかない。ハッピーエンドはどこ行った。


なのに、なんだろうこの心地よさは。
ずっとこの世界で生きていたい。 本を閉じたくない。
何が起こるのかわからない、こんなに完全なる自由さを知ってしまっては。




私は自分の人生がケリー・リンクの小説であってほしい。
(シャーロット・ブーレイ)  ――――訳者あとがき








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