辻村深月 『ハケンアニメ!』

ハケンアニメ!


監督が消えた! ?
伝説の天才アニメ監督・王子千晴が、9年ぶりに挑む『運命戦線リデルライト』。
プロデューサーの有科香屋子が渾身の願いを込めて口説いた作品だ。
同じクールには、期待の新人監督・斎藤瞳と次々にヒットを飛ばすプロデューサー・行城理が組む『サウンドバック 奏の石』もオンエアされる。
ハケンをとるのは、はたしてどっち?
そこに絡むのはネットで話題のアニメーター・並澤和奈、聖地巡礼で観光の活性化を期待する公務員・宗森周平……。ふたつの番組を巡り、誰かの熱意が、各人の思惑が、次から次へと謎を呼び新たな事件を起こす!
熱血お仕事小説。


秋アニメの「SHIROBAKO」がめちゃくちゃ面白くて、毎週楽しみにしてます(*⁰▿⁰*)
1クール・12話のアニメーション作品にどれだけたくさんの人が関わってるか、
視聴者が見逃してしまうようなほんの一瞬のコマに、どれだけの情熱が傾けられてるのか、
制作のスケジュールがどれだけシビアか。

そういうリアルな現場事情を思い知らされるエピソードがいっぱいで、
楽しいだけじゃない、“仕事としてのアニメ”に関わる人たちが生き生きと描かれてる。

で、この『ハケンアニメ!』、SHIROBAKOが面白いって人にはドンピシャ。
アニメ制作に関わる女性たちが主人公という点もSHIROBAKOと同じだし。

プロデューサーの香屋子が主人公である第一章の冒頭で、
アニメが好きだからアニメ業界に入った香屋子が、憧れの王子監督(の作品)について
思いを馳せる、物語の掴みの描写がすごくいい。


 気持ちが十分に言語化できない、影響を受けやすい時期に問答無用に観たもの、読んだもの、聴いたものとの巡り会いは一生の財産で、その貯蓄をもとに、香屋子はこれまで仕事をしてきた。好きなものに詳しくなることで、感動は言語化できる頭でっかちなものになり、無条件に“いい”と思えることは減った。
 香屋子はもう子供ではなく、わからないからこそ神秘的で魅力的だった世界の輪郭を獲得してしまった。専門用語に通じ、技術にさえ詳しくなってしまった以上、それは仕事だから当然だ。 誰かのファンになったとしても、それは仕事相手への「尊敬」だという側面が強い。
 再び、誰かのものに、こんなに恋い焦がれるように「憧れ」るなんて。
 『ヨスガ』を観ながら、おもしろい、と思っていることに、後から気づいた。感情に名前が追いつかなかった。 (p8)


アニメなり小説なり映画なり音楽なり、たくさん読んだり見たりして吸収する人ほど、
この気持ちは痛いほどわかると思う。わかるよね。
「おもしろい」「好きだ」というわくわく感が、大人になるにつれ摩耗していく寂しさと
それを吹っ飛ばす新しさを持つ作品に会えた時の感動と興奮。

で、その香屋子の憧れの監督・王子千晴の強烈なキャラがまたよくて、
新作アニメの制作発表のトークショーのシーンの彼の台詞がもう最高だった。
世間一般に浸透した“オタク” というワードについて(もしくはその言葉の扱われ方について)
苛立ちや怒りを感じたことがある人には、もう快哉を叫びたくなる台詞がね、あるんですよ。


あちこちに散りばめられた胸を打つ台詞やシーンが引き金になって、
夕方のアニメの再放送シーンを見るために学校から走って帰った子供時代とか、
好きで好きで仕方のなかった漫画の世界観によく似た小説を書いたりだとか、
母親と一緒に夕飯食べながら見てた「ふしぎの海のナディア」の衝撃だとか、
そういう思い出がぶわわー!!ってきて、 懐かしさで泣きそうになった。


(ナディア15話の「ノーチラス最大の危機」、まあ超絶有名な回ですが
あれを観たとき母もわたしも言葉を失って呆然としていたのよく覚えてる)


すごく、すごくよかった。無条件に面白かった。
アニメ見ない人が読んでももちろん面白いけど、アニメ好きでよく見てる大人にとっては
つい自分の身に置き換えちゃうから、格別の面白さが味わえると思う。

作中に出てくるアニメ、「運命戦線リデルライト」と「サウンドバック 奏の石」、
めちゃくちゃ観たいよ!辻村さんの原案で、実現しないもんだろか。





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