中山可穂 『愛の国』

愛の国 (単行本)


弾圧の暗い影、獄中のタンゴ、刻み込まれた愛の刻印。愛する人も記憶も失い、自分が何者なのかを問いながら彼女は巡礼路を歩き続ける。十字架を背負い、苛酷な運命に翻弄され、四国遍路からスペインの聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラへ。衝撃のデビュー作『猫背の王子』から20年―底なしに愛し、どこまでも闘う主人公ミチルに待ち受ける愛と死、罪と罰、天国と地獄を渾身の筆で描ききった恋愛小説の金字塔!王寺ミチル三部作完結篇。

この人の書くものは沼っぽいと思う。
ストーリーと、そこに込められた情念みたいなものに引きずられて、
気がつくとどっぷり沈んでしまって、なかなか這い上がれない。
読むのにとてもエネルギーが要る。


二十代そこそこの頃は、中山さんの著作を読むたびに鬱っぽくなったり
情緒不安定になったりしていた。
とにかく、愛とか情とか業とか、“執着”が強すぎる人たちばっかりが出てきて、
その癖、必ずといっていいほど自ら破滅を選ぶような話が多い。


王寺ミチルといえばその愛と破滅のアイコンみたいなキャラクターで、
「ファシスト政権が支配する、同性愛者が迫害される近未来(パラレル)日本」
という設定の今作では、前2作をはるかに凌ぐいばらの道っぷり。

正直、この人のファンを自認していても、荒唐無稽とギリギリ紙一重なストーリー展開と、
あまりにも芝居がかった台詞、耽美すぎる人物描写に時々引いてしまうことがあるんだけど、
今回はそういうものを吹っ飛ばしていくパワーがあって、今までの引き込まれ方とは
どこか違うものがあった。

あとがきを読んで、中山さんも相当な覚悟で書き上げたのだと実感し、
胸を突かれた。

去年、 『悲歌』の文庫版のショッキングな後書きを読んでいたから、
新作を、しかもミチルの完結篇でこんな大作を読めて、心底よかったと思う。


どうかまた、この先も、中山さんの作品に出会えますように。
 






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