皆川博子 『双頭のバビロン』

双頭のバビロン

爛熟と頽廃の世紀末ウィーン。オーストリア貴族の血を引く双子は、ある秘密のため、引き離されて育てられた。ゲオルクは名家の跡取りとして陸軍学校へ行くが、決闘騒ぎを起こし放逐されたあげく、新大陸へ渡る。一方、存在を抹消されたその半身ユリアンは、ボヘミアの〈芸術家の家〉で謎の少年ツヴェンゲルと共に高度な教育を受けて育つ。アメリカで映画制作に足を踏み入れ、成功に向け邁進するゲオルクの前にちらつく半身の影。廃城で静かに暮らすユリアンに保護者から課される謎の“実験”。交錯しては離れていく二人の運命は、それぞれの戦場へと導かれてゆく。動乱の1920年代、野心と欲望が狂奔するハリウッドと、鴉片と悪徳が蔓延する上海。二大魔都を舞台に繰り広げられる、壮麗な運命譚。

皆川博子 『双頭のバビロン』読了。


凄かった。すごい、としか言いようがない。

物語に魂を抜かれて、まだうまく現実世界に戻って来れてません。
こういうのははやり、大長編の醍醐味だなあ。
上下2段組、538頁。しかし、体感的には一瞬!
『ガダラの豚』や『屍鬼』を読んだ時の興奮を思い出した。
授業とか色々さぼって読み耽ったなぁー(゚▽゚*)


皆川博子さん、もう八十を越えておられますよね。
作家としての、この方の器とエネルギーに賞賛を。

うーん、面白かった。
本の世界にどっぷりと頭まで浸かって現実が覚束ないという、
読書としては最上の、至福の時間を味わいました。しやわせー。





※一切ネタバレをしたくないので内容に触れる感想は折りたたみ!


惜しむらくは、わたしに世界史の知識がサッパリってことだ・・・。

特にオーストリアとかヨーロッパの近代史なんてスコンと抜けてる。
これが理解できていたらもっとおもしろかったのに!と
大変口惜しい思いをしまして、
ヨーロッパ史、特にドナウ周辺のあたりを勉強し始めたバカがここにいます!!

オーストリアに特化した資料って意外と少ないんですが、
これはカラー写真満載で、とっかかりとしては非常によかったです。


図説 オーストリアの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史)図説 オーストリアの歴史 (ふくろうの本/世界の歴史)
(2011/09/16)
増谷 英樹、古田 善文 他

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ゲオルクのハリウッドパート、上海パート、
ユリアンのボヘミアの「芸術家の家」パートはそれぞれ
単体としても充分読み応えのあるクオリティのものが入れ子構造となって
それがある時点から俯瞰になってくるこの鳥肌感!!

ツヴェンゲルの本名が出た時、リアルに声出たよ。うおお。

タイトルからして強調されているように、
結合双生児として生まれたゲオルクとユリアンの運命譚であるけれども、
読み終えた後に感じたのは、
ユリアンの半身は、ゲオルクではなくてツヴェンゲルだったのじゃないかということ。

結合双生児として生まれ、分離手術の後で「いないもの」として扱われたユリアン。
彼を庇護し、愛したのはヴァルターだけだった。
ヴァルターがもう少し器用な愛情を示すことのできる人間であれば
ユリアンの人生も大きく変わっていたのじゃないかという気もするが。

まず半身である双子の兄弟であるゲオルクを失い、
家族も愛情も最初から与えられることがなく、国さえ持たず
何も持たず、孤独である自覚すら危うい存在であったユリアン。

最期にツヴェンゲルと結合し(子供の遊びのような戯れの上ではあるが)
ユリアンは初めて魂の充足を得たのじゃないだろうか。

そしておそらく、ツヴェンゲルも。

ラスト、二人の最期についてのどんでん返し(?)は
「ええええここへきて伏線を見逃したのかわたしはあああ!」
とちょっと慌てたんだけど、落ち着いて考えてみると
これはどちらが正しいとかトリックということではなくて、
ユリアンとツヴェンゲルの「自分が希んだ最期」というか
「自分が(相手に)そうしてやりたかったこと」じゃなかったのかな、と。

うーん、面白かった。

最新刊の『海賊女王』もこれまた長編で面白そうなんだよな。
年末のお楽しみに取っておくか・・・。


海賊女王(上)海賊女王(上)
(2013/08/22)
皆川 博子

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