山内マリコ 『ここは退屈迎えに来て』

ここは退屈迎えに来て


山内マリコ 『ここは退屈迎えに来て』読了。


わたしが生まれた町には、マルイもビブレもOPAもなかった。
もちろんハンズもロフトも。
かろうじて生き残っていたPARCOも閉店寸前だった。
おしゃれな子たちは電車に乗って名古屋まで服を買いに行っていた。
友達の誕生日に、気の利いたプレゼントをしたかったら、
親を拝み倒して交通費を出してもらうしかなかった。

通信手段といえばポケベルとPHS。
もちろんネットなんて、自宅に回線があるはずもなかった。

高校生の頃、クラスメートの女子はみんなこぞって「東京」に憧れていた。
卒業したらここを出て、東京に行くのだと。
わたしは「東京ってなんか怖いところでしょ?」と思ってたから、
周囲の東京信仰が不思議だった。

思えば、十代のわたしたちは
「東京(都会)へ行きさえすれば何者かになれる」
と思っていた。

女優。
ファッションデザイナー。
イラストレーター。
スチュワーデス(当時はそう呼ばれていた)
通訳。
ツアーコンダクター。
カメラマン。
美容師。

大学へ進学するにしても、地元で“女子大生”をやるのと、
“東京の女子大生”になるのとでは全く意味が違った。

もしかしたら、地元ではお目にかかれない“王子様”に見初められて
東京で“お姫さま”になることだって出来るかもしれないと。

程度の差こそあれ、誰もがそんな幻想を抱いていた。
“東京は怖いところ”と思っていたわたしでさえ、
都会に出たら、何かステキなアビリティを
 (何の苦労もなく)(自然に)得られるのだと
何の根拠もなくそう信じ込んでいた。


「4 君がどこにも行けないのは車持ってないから」


ページを繰り、まず目次の4章のタイトルを見て思わず笑ってしまった。

そうなのだ。
わたしの生まれた町では、車がないとどこへも行けない。
18を待たずに退屈な地元を逃げ出したかったら、
“車持ってる男の子”をつかまえるしか方法はなかった。


地方出身女子の心をえぐりまくる、
“何者かになるはずだった”女の子たちの、8つの物語。



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