阿部了・阿部直美 『おべんとうの時間』

おべんとうの時間

私は、台所に立つ母の横にぴったりくっついて見てたから、全部覚えてるんです。兄と姉のお弁当を見て、「早く中学生になりたいなぁ」って、羨ましくってたまらなかったから。母は、夕飯の残り物をお弁当に入れることはなくて、夜トンカツだったら、パン粉をまぶしておいて、お弁当分は翌朝揚げていました。朝から、煮物やきんぴらも作って、起きると台所からいい匂いがしました。
 中学校に入学する春、父の仕事の都合で広島から福岡へ引っ越しました。転勤族で、引っ越しはしょっちゅうでしたけど、あの時ばかりは父に怒ったんですよ。「お母さんのお弁当が、食べられないじゃない」って。引っ越し先の中学は給食だったから、もうショックで。念願の弁当生活は、高校でやっと実現しました。(p104)

 弁当ってさ、作る人の性格が出るよね。うちのおふくろのは、ピシッと線を引いたみたいな弁当だった。人のと比べるとわかるのよ。(中略)小学生の時かな、弁当箱を開くと友達が寄ってきて「交換してくれ」って、俺の玉子焼きを欲しがるの。「芥川んとこの玉子焼きは、黄身しか使ってねえ」って評判になった。そんなわけないのよ。ただ、まっ黄色で白い模様がなかったから、そう言われたの。おふくろは几帳面だったから、ていねいにていねいに玉子をかき回してから薄いやつを何枚も重ねて巻いたんだよね。
 うちのカミさん?白い模様どころか、ちょっと焦げとるぞ。しかも、ぎゅうぎゅう詰めだ。俺のこと、太らせたいのよ。 (p142)

 おやつって言ったら、味噌むすびね。季節によって、ちまきがいっぱいに台所にぶら下がってた。ほれ、ふきんを引っかけておく場所よ。あそこに、ズラーッとちまきが並んでて、ひとつふたっつって、取って食べたのよ。一緒に食べるきなこも、家で作ってたし、包む笹だって、そこらへんにいっぱいあるわけだ。
 昔はそうやって、何だって自分のところで作ったんだ。梅干しも変わったよな。昔はさ、とにかくしょっぱくてすっぱくて、あれを見るだけで唾液がだらだら出て、ご飯をいっぱい食べられたもん。今は、梅干し見たって唾液なんか出てこないよ。  (p178)


阿部了写真, 阿部直美文 『おべんとうの時間』 読了。

大学教授、海女、幼稚園児、写真家、鉄道運転士。等等。
人の数だけ生活があり、仕事があり、それぞれの食卓がある。
39個のお弁当と、家族の食卓にまつわる思い出、39人分のインタビュー。

いわゆるレシピ本ではない。
普通の人の、ごく普通の、“いつものお弁当”の写真だ。

整然と美しく詰められた料理本のお弁当とは違って、
全体的に茶色っぽかったり、隣のおかずが越境していたり、
おかずの仕切りもカラフルな紙カップでなくアルミホイルだったり。

なのに、どれもすごくすごく美味しそうで、それに、どこか懐かしい。

旦那さんが朝早い仕事で、3時半に起きてお弁当を作る奥さん。
ゆっくりと座ってお昼をとる時間もない忙しい仕事の人。
病気の奥さんの代わりに娘さんのお弁当も作るお父さん。

色々な事情があって、色々な家族がいて、色々な考え方があって、
でもみんなご飯は食べなきゃいけなくて、
工夫したり心配したり譲り合ったりして、それが全部“お弁当”に詰まってる。

インタビューの文章も、みんな思いつくまま喋ってる、という感じで、
よくある“イイ話”ばっかりというわけでもない。

でも、なんとなく見えるんですよね。
そのお弁当の向こうに、家族の身体を気遣う気持ちとか、
大人になってから、母親を有難いなって思う感謝の気持ちとか。

思いつくまま、適当にページをめくっていても、
どのページでも、ついついじっくり隅々まで舐めるように見てしまう。

だって、卵焼き一つにしたって、どれ一つとして同じ形のものがない。
そのうち「うちのお母さんはネギ入りの玉子焼きが好きだったなあ」とか、
「定番のおかずなのに、そういやお弁当にしゃけが入ってたことないなあ」とか、
自分が子供の頃に作ってもらったお弁当の事を思い出したりして、
なんともいえず懐かしい気分になります。

うちの母は器用だったし料理が上手かったんで
いつもおいしいご飯食べさせてもらってました。

胡麻もね、ちゃんとフタがついてる小さいフライパンみたいな、
胡麻煎り器?で毎回煎るんだよね。
それをすり鉢でごりごり擦るのはわたしの仕事だった。
すり鉢の溝にはさまった胡麻の粉を、つまようじで綺麗にこそげ取るのに
熱中してたw へ、へんな子供・・・(´∀`|||)

たぶん、生粋のズボラな癖に、
美味しい物を食べるためなら手間ひま惜しまない
わたしのこの性格も、確実に母から受け継がれたんだろうな(o´∀`o)


てか、ほんとなんでなんだろう、
どんだけ思い出しても、しゃけ入ってたことないぞ、
うちのお母さんが作ってくれたお弁当・・・・。

晩御飯のおかずには、普通に出てたのに。
うーん、謎だ・・・・( *`3´)


2 件のコメント:

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    柚さん、こんばんは。
    私も『おべんとうの時間』が大好きです。
    2冊とも持っているのですが、写真もすてきだし、
    何よりも人柄とその人の人生がみえる文章が好きです。
    意外と毎日同じものを食べている人が多いのもおもしろいですね。
    母がつくってくれたお弁当をもう一度食べたいなと思いました。

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  2. 柚@管理人2013年5月17日 1:03

    SECRET: 0
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    こんばんは~ご訪問ありがとうございます(´ェ`*)
    『おべんとうの時間』すごくいい本ですよね!インタビューも、その人が目の前で喋っているかのような雰囲気があって楽しかったです。きっと取材している阿部夫妻の人柄もあるんだろうなあと思いました。
    わたしも、母のお弁当がもう一度食べたいです(o´∀`o)

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