サマセット・モーム 『九月姫とウグイス』

九月姫とウグイス (岩波の子どもの本)


サマセット・モーム 『九月姫とウグイス』

Twitterで呟いていた方がいらして「なつかしい!!」「しかし細部が思い出せない!」
と話題になったので、図書館で取り寄せてもらって借りてみました。
(※版元の岩波書店HPでは「品切重版未定」とありますが、事実上絶版ですかね)

岩波文庫の「モーム短篇選(上)」にも収録されていて、
こちらは入手可能ですが、訳者の方が異なるせいか、
雰囲気もけっこう違います。

以下、岩波文庫版の編訳者、行方昭夫氏による巻末解説
「九月姫」は旅行記『一等室の紳士』(一九三〇年刊行)に収められている御伽噺である。もともとは一九二二年にある雑誌に発表され、その後一九三九年には『九月姫とナイチンゲール』という題名で挿絵入りの単行本として刊行された。作者自身気に入った話のようだ。この旅行記は「ラングーンからハイフォンまで」という副題を持つように、昔のビルマ、シャム、インドシナの旅行記であるが、その一章として挿入されている。    (p328)

1922年というと、モームが48歳の時。
肺結核が悪化し、スコットランドのサナトリウムでの療養中に
かの有名な「月と六ペンス」を執筆した(出版は翌年)1918年より
4年後にあたります。

サナトリウム退院後の1919年にはハワイ、サモア、マレー、中国、ジャワなど、
1920年にも中国へ旅行しており、1921年から1931年までに10年間に
極東、アメリカ、近東、ヨーロッパ諸国、北アフリカなど様々な国に
渡っており、「九月姫とウグイス」はその辺りの事情を色濃く反映しています。

シャム(タイ)の王様には、2人のお姫様がいて、
「夜」と「ひる」という名前だったんだけれど、
その後どんどん姫が生まれて、
「夜」「ひる」

「春」「夏」「秋」「冬」

「月曜」「火曜」「水曜」「木曜」
「金曜」「土曜」「日曜」

「一月」~「九月」

というように、新しく姫が生まれるたびに
お姫様たちはどんどん名前を変えられてしまい、
そのせいで性格もどんどんひねくれてしまったけれど、
末っ子姫の九月姫だけは、(その後姫が生まれなかったので)
名前を変えられることなく素直に育ちました、と。

もうね、最初の設定だけでツッコミどころ満載だよ!!
まあ、童話ではよくあるタイプの設定ですけど・・・

名前がコロコロ変えられたから性格が歪んだ、っていうより、
“そんなにたくさんの名前覚えられない”というお妃と
“十二人もあれば姫はもうたくさん、十二月姫がうまれたら
しょうがないからお妃の首をちょん切る”という王様、
この似た者同士の身勝手夫婦に育てられたらイヤでも歪むわ。

自分のオウムが死んでしまって、悲しむ九月姫に
「そんなことはばかばかしいことだから、
きょうはお夕はんをやらずにねかしてしまいなさい」
というお妃も相当だし、
パーティーへでかけたいから、お妃のいうとおり
さっさと姫を寝かして一人放っておいた、という侍女たちも
身勝手ここに極まれりだよ・・・。

で、一人さみしく泣きながら寝ていた九月姫のもとへ
窓からウグイス(邦訳ではウグイスですが本当はナイチンゲール)
が入ってきて、きれいな歌を歌って九月姫を慰めます。

で、性格悪い姉さんたちは九月姫のウグイスが羨ましくて妬ましくて
(自分たちもオウム飼ってるのに・・・)
ちくちくと意地悪をしかけるんですね。
この性格歪んじゃった姉姫さまたちの嫉妬深く意地悪な表情が
なんともいえず・・・・( º言º; )

武井武雄さんという方の挿画はレトロで大変美しいのですが
この姉さんたちの表情ひどすぎるよ・・・・(。´Д⊂)

【ここからネタバレ】
で、姉さんたちの意地悪によって
「いつかこの素敵なウグイスが逃げてしまうんじゃないか」
という不安にかられた九月姫は、ウグイスをカゴに閉じ込めてしまう。

自由を奪われ、カゴから出してと懇願するウグイスだが
心優しいはずの九月姫も自分可愛さゆえに耳を貸さない。
そうこうしているうちにウグイスはどんどん衰弱し、
「出してくれなければ死んでしまう」というウグイスの言葉に
とうとう姫は泣きながらウグイスを放してやる。

「おまえをかごに入れたのは、おまえが好きで
わたしひとりのものにしておきたかったからなのよ」と
自分の行動を正当化する九月姫もけっこうしたたか。

【ネタバレおわり】

この九月姫とウグイスの関係はとてもいいものだと思うし、
物語もハッピーエンドで終わるのだが、
姉姫さまたちの行く末は踏んだり蹴ったりでもう気の毒すぎる。

ウグイスを放した時の
「お姫さまは、わっと、なきだしました。
じぶんのしあわせよりも、じぶんのすきなひとのしあわせを、
だいいちにかんがえるのは、とても、むずかしいことだからです。」
という一文にモームの人間観がちょっと見える気がします。

結局人間は自分が一番可愛い生き物なんだなーというのは
自分自身の胸に手を置いてみても大変納得できるのですが(・・・・)
愛情とか独占欲とかそいういうものがからむと、ますます人は
身勝手になるよね。
「あなたの幸せがわたしの幸せ」って言ったりもしますが、
それって、お互いが同じだけそう思っていないと成り立たないのでは、と。

九月姫とウグイスは、お互いに歩み寄り、譲り合って
しあわせな関係を築くことが出来たけど、人間同士はなかなかうまういかん。


名前を変えられる娘たちの話、と言えば
『王さまのアイスクリーム』ですね!!
このお話もだいすきだー*。・+(人*´∀`)+・。*

王さまのアイスクリーム (ゆかいなゆかいなおはなし)王さまのアイスクリーム (ゆかいなゆかいなおはなし)
(2010/02)
フランセス ステリット

商品詳細を見る


この子たちも、大人の都合で名前を変えさせられましたが
彼女たちはお父さんを気遣い、手伝う優しい素直な子たちだったなあ。

これも初版は1978年で、そうとう古い絵本ですが
2010年に新装版が出ててばりばり流通してるね!!
これもまた読みたくなってきたなあ(*´pq`*)

0 コメント:

コメントを投稿