小田雅久仁 『本にだって雄と雌があります』

本にだって雄と雌があります


小田雅久仁 『本にだって雄と雌があります』読了。

おもろかった。べらぼうにおもろかった。
ただしかなりマニア向け。

まずタイトルと装丁でブックマークせずにはおれず
あらすじ読んで「なんじゃこりゃー」と思いつつ、
読み始めてみれば、人を食ったような語り口と、
衒学的というにはかなり下世話なネタの連発に猫パンチを食らう。

あらすじはですね、どう要約しても誤解が生まれるんですが
おおまかには深井家という本に魅入られちゃった(?)因果な一族と
“幻書”という摩訶不思議な“書物たち”にまつわるクロニクル。
これ小説のジャンルとして何に当たるのだろう、
ファンタスティック・ビブリオマニア・SF、とか?

長いわ。

まー、万人受けする小説じゃないですよ。いくらなんでもマニアックすぎる。
割と序盤で、アントニオ・パニッツィの名が出てきた時には
寝っころがって読んでいたベッドから転げ落ちそうになったよ。

みなさんご存じですか、アントニオ・パニッツィ。
知らないよね。普通知らないよ。日本人は。

わたしも別に詳しくないのですが、18世紀、大英博物館の館長やってて、
また、司書としても敏腕をふるい当時のまだ不備が多かった目録の問題点を指摘し、
いろいろなところで喧嘩を売りまくって敵を作りまくりながらも
彼の考案した目録基準が現在のISBD(国際標準書誌記述)に
なってる、なんかすごいオッサン、ということは知っていた。

司書の勉強した人でも、図書館学の基礎ではランガナタンとかデューイくらいしか
知らない(試験に出ない)だろうし、
図書館史とか書誌学とかまで突っ込んだ研究してる人じゃないと
なかなか知らないと思うよ、パニッツィ・・・・。

「なんで名前からしてあからさまにイタリア人のこいつが
大英博物館の館長やってたの??」とかですね、
そういう疑問を持たれた方はこの辺りを読まれるとよろしいかと思います。
すごく面白いです。

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ええとそれでですね、わたし日頃から思ってるんですけど
世の中には、才能とか努力とかいうのとはまた別の次元で
なりたくてなった、というよりなるべくしてなっちゃった
という芸術家(小説家・画家・音楽家)が時々おられるように思うのですが、
この小田さんていう著者の方もそういうタイプなんじゃなかろうか。

ていうかね、こんな珍妙な、けったいなこと頭の中で思いつく人は
そりゃあもう小説でも書くしかなかろうて。

序盤から、広げて広げて広げて、おいお前もうこれ以上無理やろそれ、
っていうくらいに広げたバカでかい大風呂敷をですね、
中盤からオラオラと勢いよく畳んでいくのですが、
「これちゃんと畳めるんやろか・・」って心配になって読んでるうちに
なんかようわからんけど折り鶴んなって飛んでったわ、いやーあはははは。
っていうくらいのオチです。凡人では想像が追い付かない。

ストーリーとしては、この中盤のオラオラ畳む過程が
非常に痛快で面白いんだけど、いかんせんここにたどり着く前までの
マニアックすぎる家族史が、長い!!!
ブクログのレビューを見ても、序盤で挫折してる方がけっこういます。
無理もないよ。

しかし“合う合わへん”があるのを承知でおすすめしたい。特に

・司書に興味がある人
・“いつの間にか”部屋に本が溢れかえっちゃう人
・本屋・図書館に足を踏み入れるとハイテンションになっちゃう人
・読んでも読んでも読みたい本がある人
・人生であとどれだけの本を読み切れるか、常に焦燥感と不安に悩まされてる人

は、是非とも読んでいただきたい。

あなたの本棚にも、こっそりとこの世にないはずの“幻書”が生まれてませんか?

いつか、“その日”がやって来た時に、白い象があなたを迎えにくるかもよ。


2 件のコメント:

  1. SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    突然のコメント失礼します。
    Twitterでこの記事がリツイートされてまして、そこから飛んできました。
    僕もこの本を読んでとても興奮しまして、
    柚さんの感想を見て共感、また感動が蘇ってきました。
    この手紙文はいつ終わって本編が始まるんだろうか、って、やりきりやがったー!!
    という勢いがとにかく好きでした。
    「あー、自分、本好きで良かったー」ってニコニコしてしまうような言葉がいっぱい出てきて、読んでてすごく楽しかったのを覚えています。
    過去の読書メモも読ませて頂きました。
    読んだことのない本が多く、これから手にとってみようと思います。
    『飛行士と東京の雨の森』は僕も最近読みまして、私自身が昔バンドやってて今は書店バイトという境遇なので、そのまんま「ソフトロック熱」にハマりました。「理想的な月の写真」・「奴隷」も好きでした。
    いきなり長々と失礼しました。
    これからもブログ拝読させて頂きたいと思います。

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  2. 柚@管理人2013年5月1日 21:31

    SECRET: 0
    PASS: 74be16979710d4c4e7c6647856088456
    はじめましてー。コメントありがとうございます!!
    本人と友人くらいしか見てないであろう、自分自身の備忘録のようなブログなのに、過去記事まで読んでいただいたようで、ありがとうございますー(*ノェノ)
    「本にだって雄と雌があります」は久しぶりに、どんな話にも似ていない、先も読めないワクワク感があった本だったので「ああーもっと色んな人に勧めたい!!でも万人受けする気がしない!!この本の面白さがわかる自分でよかったー!!」と色々な思いを抱えてジタバタしながら読み終えました。
    わたしは音楽の素養がないのですが「飛行士と東京の雨の森」は音楽をやっていた方ならもっと楽しめるんだろうなー、と羨ましく思います。
    「奴隷」はあの中では異色でしたけど、SFというか現代風刺というか、独特で面白かったですね。
    ソントンさんもブログやってらっしゃるんですね!わたしも「ハクメイとミコチ」推しですー!
    は、はは拝読などと言っていただけるようなブログではございませんが、気が向いたら今後もよろしくお願いします(´∀`*

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